【LEC会計大学院】2025年4月入学生向け入学試験変更に備えた対策を考える-その②

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今回は、前回の以下の記事の続きで、租税判例百選などを使って研究テーマを決める話になります。

実務をテーマにする際の問題点

理想は、実務を通じて疑問に感じたことを研究テーマにしたいところです。
しかし、それにはいくつかの難点があります。以下では、実務経験をテーマに反映させる際に直面する課題を挙げたいとも思います。
※他にもあるかもしれませんが思い浮かびませんでした。

  1. 提案型テーマになりがち
    税理士事務所での業務では、税務の取り扱いが適切ではないと感じることがあります。そのため、実務経験からテーマを選ぶと、「〜と法改正すべきである」といった提案型の結論に至るケースが多いです。しかし、提案型のテーマは国税審議会向けの論文には適していません。理由は、法律はすでに多くの議論を経て公布されているからです。大学院での2年間の研究だけでは、国税審議会を説得できる提案を記載した論文を記載するのは難しいです。
     
  2. 先行研究が少ないテーマになる
    実務で得た疑問をテーマにすると、先行研究が乏しい場合があります。その結果、論文において他者の研究を引用する箇所が少なくなり、自分の考えに基づく記述が中心となりがちです。説得力のある自論を構築するためには、沿革や先行研究を基に強い根拠を示す必要がありますが、根拠が薄いと読者を納得させるのが難しくなります。

仮の研究テーマを決める方法

とはいっても、大学院に入学する前や、指導教授と相談ができない段階で良いテーマを選ぶのは難しいです。
このような場合には、先行研究が進んでいるテーマを選ぶのが無難です。そのための参考資料として、「租税判例百選」を活用するのがおすすめです。

租税判例百選を活用することのメリットは、以下になります。

  1. 有名な事件が多い
    租税判例百選で取り上げられている事件は有名であり、先行研究が進んでいるケースが多いです。そのため、この本を参考に仮テーマを設定すれば、良いテーマを選びやすくなります。
     
  2. 短いページ数で要点を把握できる
    税大ジャーナルなどに掲載されている論文は、40ページ以上に及びます。その中から、自分の研究テーマに使うか分からない論文を読んで研究テーマを決めるのは大変です。一方で、租税判例百選では、2~3ページで事件の概要、裁判例の要旨、問題点がわかるため、テーマ選びの段階での負担が軽減されます。

さっそく、租税判例百選を使って研究テーマを決めてみましょう。
はじめに、租税判例百選を読んで気になったテーマをピックアップします。
続いて、ピックアップが完了したら、自分の興味関心や、実務との関わりがあるものを仮の研究テーマとして決めます。仮のテーマとはいえ、この後論文を読んだりします。興味関心を持つことができないテーマで進めるとこの後の論文を読むこと自体が嫌になるため、興味関心が持てそうなものを仮の研究テーマにしましょう。イメージにすると以下の図のようになります。

2024年12月24日追記

また、個人的な意見にはなりますが、研究テーマは以下のような検証型(判断型)に設定すると、論文が書きやすくなると感じています。

テーマ例:

  • 〇〇に条文Aが適用できるのかを明らかにする
  • 〇〇の所得区分について
  • 条文Aに〇〇は必要か否か
  • 〇〇の判定基準(適用要件)を明らかにする

検証型のテーマにした場合には、今ある条文(事象)に対して沿革や先行研究、裁判例から何を重視しているのかを研究し、その結果をもとに自身の解釈を書けるためです。

仮テーマが決まったら、次のステップは研究計画書の作成です。
研究計画書については次回以降の記事で詳しく解説します。

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