【どこまで伝える?】不動産取引における亡くなった人の情報

調べもの

2024年の宅地建物取引士試験の問42で「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に関する問題が出題され、話題になっています。そこで、「死の告知に関するガイドライン」とは何かを調べてみました。

ガイドラインを見る限り、自然死等の通常の亡くなりかたで特殊清掃等が入らなければ告知義務はないようです。

※本記事は、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を参考に記載しています。

ガイドラインができた背景

国土交通省のガイドラインの概要を確認すると、人の死についての告知の判断基準が明確でなく、トラブルの未然防止の観点からこのガイドラインが策定されたようです。また、物件での人の死がすべて告知事項になる場合、単身高齢者の入居が困難になることも理由の一つとされています。

宅地建物取引業法第47条第1項第1号※1では、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすものは告知する必要があるとされています。しかし、「何をもって相手方等の判断に重要な影響を与えるのか」は、不動産会社によって判断基準に差が生じる可能性があります。

一方で、すべての死亡事例を重要な告知事項とする場合、不動産会社は過去の全ての死亡事例を相手方に伝えなければならなくなります。例えば、10年前に当該物件で発生した死亡事例についても報告が必要となり、不動産会社の負担が増大し、大きな負担となる可能性があります。

そのため、判断基準としてガイドラインが策定されたことは、基準に基づき必要な告知が適切に行われるようになるので、個人的には有用だと考えています。

人の死について告げなくてよい場合

以下の場合は、相手方等に死亡の事実を告げなくてもよいとされています。

①【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)。 ※事案発覚からの経過期間の定めなし。

②【賃貸借取引】取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した①以外の死・特殊清掃等が行われた①の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後

③【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した①以外の死・特殊清掃等が行われた①の死 ※事案発覚からの経過期間の定めなし

(別紙1)ガイドラインの概要より引用

要約すると、以下のように解釈できます。

  • 売買物件: 自然死等の場合、適切な処置が行われていれば告知義務はない。
  • 賃貸物件: 適切な処置が行われている場合でも、事案発覚から概ね3年程度は告知義務がある。

特に驚いたのは、自然死・日常生活の中での不慮の死の場合、事案発覚からの経過期間の定めがないことです。

以下のフローチャートは、これらの判断基準を視覚的にまとめたものです。

売買取引の場合

賃貸取引の場合

  • 自然死等: 老衰等の自然死または日常生活の中での不慮の死が発生した場合。
  • 特殊清掃等: 死亡に伴う特殊清掃や大規模リフォーム等。

ガイドラインに基づき「告げなくてよい」と判断される場合でも、事件性や周知性、社会への影響によっては相手に伝える必要があります。

以前、不動産会社から「軽微な告知事項あり」と記載された物件資料をもらったことがあります。その告知事項について尋ねたところ、近隣の騒音問題があるとのことでした。このような情報は非常に有益であり、不動産会社には積極的に公開してもらえると助かります。

結局のところ、ガイドラインの有無にかかわらず、信義則に従って必要な情報を相手に伝えることは重要ですね。

終わりに

ガイドラインに記載されている内容は、あくまで目安です。トラブルの未然防止のためにも、相手方の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項だと思われる場合は、相手方に適切に告知することが望ましいです。

※本記事の内容は、2024年10月22日時点での私自身の解釈に基づいています。そのため、時間の経過や新しい情報により変わる可能性があります。ご了承ください。

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